LEED v5 「材料と資源」(MATERIALS AND RESOURCES)を解説 LEEDに評価される建材とは?

2025年4月28日、米国グリーンビルディング協会(USGBC)より、環境性能評価システム「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」の最新バージョンであるLEED v5が正式リリースされました。
評価項目は多岐にわたりますが、今回は「MATERIALS AND RESOURCES(材料と資源)」の内容に注目し、建材がLEED認証にどう関係するか解説します。
※本記事は2025年5月28日時点で公開されている「LEED v5 REFERENCE GUIDE」を意訳した内容です。
※LEED BD+C(Building & Design)の新築(New Construction)、コア&シェル(Core and Shell Development.)が本記事の対象です。

全体として脱炭素化への要求が強化

LEED v5では、建物のライフサイクル全体(ライフサイクルカーボン・ホールライフカーボン)の脱炭素化の推進を目指しています。
従来(LEED v4.1)で重視された省エネやエネルギー効率化による運用時CO2(オペレーショナルカーボン)の削減だけでなく、建物の建設・維持・解体段階でのCO2 (エンボディドカーボン)の削減が重視されます。
また、削減量の多寡を判断するために、ライフサイクルアセスメント(LCA)※1についての認知・要求は世界的に拡大しており、日本でも建築物LCAの制度化が進んでいます。
例えば、国土交通省では令和7年度に建築物LCAを官庁営繕事業で開始、一部の民間企業では建設時CO2算出を義務化する、などの動きがあり、LEEDの更新内容とベクトルが一致しています。
※1 ライフサイクルアセスメント...(Life Cycle Assessment)の略。
    製品やサービスの原料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの全ライフサイクルにおける環境負荷を定量的に評価する手法。

MATERIALS AND RESOURCES(材料と資源)の概要

必須条件(Prerequisite)が2項目、選択項目のポイント(Credit Point)が5項目あります。
必須条件の項目には加点要素はありませんが、条件を満たさないと認証取得ができない前提条件となっています。
以下に各項目の概要を解説します。

MRp1 PLANNING FOR ZERO WASTE OPERATIONS(ゼロ・ウェイスト※2運用計画)

建物の運用段階における廃棄物の削減と資源循環の促進を目的とした項目で、サーキュラーエコノミー実現のための基盤となる取り組みとなっています。
具体的には、リサイクル可能な資源の保管収集と、ゼロ・ウェイスト運用計画の策定が求められます。
※2 ゼロ・ウェイスト...Zero Waste ごみを出さない、無駄をなくす

MRp2 QUANTIFY AND ASSESS EMBODIED CARBON
(エンボディドカーボンの定量化と評価)

エンボディドカーボンを可視化させることで、その削減に向けた取り組みを促す目的の項目で、設計初期段階から脱炭素の視点を持ち込むことが可能となります。 具体的には、CO2排出量計算ツールを用い、構造・外装・外構に関する建材(アスファルト、コンクリート、石材、構造用鋼、断熱材、アルミニウム押出成形品、構造用木材および複合材、外装材、ガラスなど)の地球温暖化係数(GWP)を定量化します。その中から排出量上位3つを特定し、排出量削減の施策を打ち出す必要があります。

MRc1 BUILDING AND MATERIALS REUSE (建物と建材の再利用)

新築で1-3ポイント、コア&シェルでは1-5ポイントの設定です。 資源の節約・廃棄物の削減・歴史的価値の保存を目的とした項目で、再利用材料を新しい建物の設計に取り入れることを推奨します。 具体的には、同一建築物からの流用、市場から調達した再利用材の使用などによって再生利用材の構成比率を高めることで評価されます。 対象は、構造材(梁・柱・床スラブなど)、外装材(外壁・窓・屋根材など)、内装材(床材・天井材・家具など)と多岐にわたりますが、再利用に足る強度や安全性があることが前提となります。

MRc2 REDUCE EMBODIED CARBON(エンボディドカーボンの削減)

新築で1-6ポイント、コア&シェルでは1-8ポイントの設定です。 MRp2で構造・外装・外構に関する建材のエンボディドカーボンの定量化と評価が求められましたが、これを前提として本項目では実際の削減度合いが評価対象となります。 LEEDプラチナ認証を目指す場合には、排出量20%削減が最低ラインとなります。 本項目では3つのオプションが用意されており、各取り組みで獲得ポイントが決まります。
                                   
Option 1 全体建物ライフサイクル評価
(WBLCA...Whole building life cycle assessment)
WBLCAでベースラインからの削減量を計算し、削減量に応じて加点
Option 2 高性能EPD製品を複数採用同等製品の業界平均と比較して削減量を計算し、削減量に応じて加点
Option 3 建設現場の炭素排出量を詳細に追跡把握請負業者の燃料消費把握で1ポイント、下請け業者まで含むと2ポイント

MRc3 LOW-EMITTING MATERIALS(低放散材料)

新築で1-2ポイント、コア&シェルでは1ポイントの設定です。 快適な室内環境の確保のために、揮発性有機化合物(VOC)などの有害物質が少ない建材の使用を推奨します。 各材料カテゴリ(Pathway:パスウェイ)で一定割合以上の製品が低VOCまたは無放散であることで加点されます。 Path1(塗料とコーティング・床材・天井材)は全て90%以上で1ポイント。 上記の達成に加え、 Path2(接着剤とシーラント・壁材・断熱材・複合木材)から2項目80%以上達成で追加1ポイント。 または、 Path3(家具)にて80%以上達成で追加1ポイント。 製品ごとに第三者試験機関による認証が必要ですが、自然素材は無放散とみなされます。

MRc4 BUILDING PRODUCT SELECTION AND PROCUREMENT
(建材の選定と調達)

新築で1-5ポイント、コア&シェルでは1-5ポイントの設定です。 環境負荷の低減と社会的責任の履行を目的に、環境・健康・社内的責任に配慮したサステナビリティ建材の選定と調達プロセスを評価します。
具体的には、第三者認証(Third-party certifications)、エコラベル(Ecolabels)、宣言書(Declarations)、規格(Standards)において、認証の数・レベル・環境性能の高さに応じて建材が評価され、そのような製品を多く採用することで評価が上昇します。 MRc2と異なり、本項目では内装材も評価対象に加わっています。 LEED V4.1の条文を参考にするならば、第三者認証済みのEPD、HPDなどが評価対象になると思われます。

MRc5 CONSTRUCTION AND DEMOLITION WASTE DIVERSION
(建設・解体廃棄物の分別転用)

新築で1-2ポイント、コア&シェルでは1-2ポイントの設定です。 発生する廃棄物を埋立・焼却処分ではなく可能な限り再利用・リサイクルし、資源の有効活用と環境負荷低減を目指す項目です。 具体的には、建設及び解体における資材管理計画を策定提出し、廃棄物の種類・量・処理方法・最終処分先を記録した最終報告書を提出します。 その中で、建設・解体資材の50%以上を転用し、10%以上をリサイクルすることで1ポイント、75%以上を転用し、25%以上をリサイクルすることで2ポイントとなります。

共同カイテック製品(OAフロア)はどこに関係する?

当社製品の中でもこの分野に強いのは「ネットワークフロア40」です。 ネットワークフロア40の場合、以下の4項目の評価向上に関係すると考えられます。

MRc1 BUILDING AND MATERIALS REUSE (建物と建材の再利用)
ネットワークフロアは、リユース・リサイクルが可能なサスティナブル建材です。
以下の観点から本項目の評価につながると考えられます。
・躯体に接着しない置敷構法を活かし、敷設済み製品の移設・再利用が簡単。
・製品のリユースを体系化して運用おり、リユース品※3をプロジェクトに採用可能。
※3 常備在庫品ではありません。在庫は状況については都度お問合せください。

MRc3 LOW-EMITTING MATERIALS(低放散材料)
ネットワークフロアは、低放散材料の証明であるClean air Gold認定をアメリカで取得しています。
第三者試験機関の認証を経た製品として、Path1に含まれる床材カテゴリの条件クリアに寄与すると考えられます。

MRc4 BUILDING PRODUCT SELECTION AND PROCUREMENT(建材の選定と調達)
ネットワークフロアは、エコマーク製品で環境に配慮された製品と認められています。
また、2023年から第三者認証済みのEPD(SuMPO EPD)を公開しています。
さらに、アメリカにてHPDを公開しており、環境面だけでなく人の健康面でもプラスの評価が得られると考えられます。

MRc5 CONSTRUCTION AND DEMOLITION WASTE DIVERSION
(建設・解体廃棄物の分別転用)

MRc1の項目で述べた通り、ネットワークフロアはリユース・リサイクルが可能で、廃棄物の削減及びリサイクルの推進に寄与すると考えられます。
リサイクルは1998年から、リユースは2004年から実績を重ねており、これからも廃棄物とならない体制維持を継続します。

ネットワークフロアは他にもメリットがたくさん

今回はLEEDの評価項目に関連する内容でしたが、ネットワークフロアにはカーボンニュートラル・省資源化といった環境的な観点以外にも、快適性向上、コストメリットなどの特長を備えています。
一昔前は高さが低いことがデメリットとされることもありましたが、配線量が減った現代においてはOAフロア高さを抑えることが建物の全体最適につながることもあります。
製品の詳細についてはぜひ一度当社へお問合せください。

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