【定期連載】都市緑化と防災① ~豪雨と防災機能について考える~

渋谷区の再開発風景

「バスダクト、OAフロア、緑化」という都市インフラの骨格となる事業を営む当社は、価値創造企業として日々まちづくりに携わっています。本シリーズコラム「都市緑化と防災」は、都市インフラを支える企業として防災とインフラの関係性や、緑化の意義を「現場の声」として連載でお届けいたします。

はじめに

土石流の爪痕

先日の熱海の土石流のニュースは衝撃的だった。
その日、私の住む神奈川県平塚市も未明からスマートフォンの緊急警報が鳴り続け、不安な夜を過ごした。朝方には近くを流れる金目川が氾濫し、大きなニュースとなった。平塚市では怪我人や死者は出なかったが、熱海は多くの死者、行方不明者が出てしまった。心から哀悼の意を申し上げたい。

ゲリラ豪雨

ゲリラ豪雨の様子

数日後、今度は関東でゲリラ豪雨が相次いだ。驚いたことに今年7月から9月までのゲリラ豪雨は全国で7万5000回になると予想されている。昨年比の1.2倍だそうで(ウェザーニュース ゲリラ豪雨傾向2021)自分が遭遇したゲリラ豪雨は年に数えるほどかと思ったが、スマホから送られる全国のウェザーニュースのユーザー情報を集計しているとのことだった。特に多いのが北海道で今年は1万400回とのこと、北海道民はたまったものではない。続いて秋田県が2500回で、東京は1400回、大阪は400回と予想されている。
しかし、今年の夏は我が国が誇るスーパーコンピューター『富岳』がゲリラ豪雨予報の実証実験をするそうで、どのように富岳がゲリラ豪雨を表現するのかわからないが、急激に変わる天候を的確に捉え、ゲリラ豪雨予測が確実にできるという。
一度ゲリラ豪雨に遭遇すると、道路の冠水、河川の氾濫、落雷、停電、ときに雹なども降り、交通機関が麻痺する。ましてや熱海のように土石流なども引き起こし、命の危険性も出る。何年か前には、地下車道で車が水没してしまい、車外に脱出できなり、スマホで助けを求めたがそのまま、さようならという言葉を家族に残し亡くなってしまったというニュースもあった。やはりこのような悲しいニュースを聞くにつれ、私どもができることは何か?を企業人は自問しなければならない。

再開発の波

渋谷区の再開発風景

一方、都市の開発、成長は止まらない。2002年に制定された都市再生特別措置法により、この20年間で、全国各地に都市の再開発が行われていった。目的は、急速な情報化、国際化、少子高齢化等の変化に対応するため、都市機能の高度化と居住環境の向上を図り、併せて都市の防災に関する機能を確保することを目的とした。更に都心でいえば渋谷、新宿、品川、東京駅周辺など国際競争力を強化すべき地域は都市再生緊急整備地域として指定され、超高層ビルが今でも全国各所に建設されている。昨今の建設特需はまさにここにあり、札幌駅前再開発から沖縄那覇に至るまで4000haを超える再開発がなされている。恐らくこの都市再生事業は改正が続き、新しい都市づくりがしばらくは波のように続くと予想される。

都市の機能

都市緑化事例:都内小学校屋上緑化

そのような中、忘れてはならないのは都市の環境、防災機能であることは言うまでもない。
ゲリラ豪雨も都市のヒートアイランド現象が要因でもあり、土砂災害は都市計画、まちづくりの脆弱さであるだろう。都市の緑化に関しては、国が都市公園制度や緑地保全をはじめとする様々な施策を打ち出しているが、まだまだみどりの実感はなく、夏の都市部は高温となり、熱中症のニュースが流れる。都市を流れる河川では洪水によりビルに水が流れ込み、住民が地下に溜まった水をかき出していたニュースは記憶に新しい。

結び

私ども共同カイテックは、バスダクト、OAフロアと言う都市インフラの一端を担いながら、1997年環境部を立ち上げた。屋上緑化を中心としたこの20数年の緑化事業の中で、歴史のある造園事業からすれば新参者ではあるが、防水や荷重など様々な制限のかかる建築物緑化に緑の創出と防災の道筋を見出すことができた。私どもが屋上に土を入れ、木を植え、空の下汗をかき、緑を増やしてきた中で感じた現場の声を、『都市緑化と防災』というコラムで少しでもお届けできればと思っている。

執筆/文責
共同カイテック株式会社 環境事業部 営業課長
川口 政義